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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

僕巷説百物語

『妖怪へぇこいたの手記』

ぼくのこうせつひゃくものがたり

これはね、昔の話じゃないのですよ。

えぇ、今の、そう、平成の話です。

一月に一人、消えて行くんですね。えぇ、本当に一人ずつ、必ず消えて行く。

七人ミサキ、というのが土佐の方には出るようですがね、それと似ておりますね、はい。

総数は変わらないから、一見すると何も起きていないようにも見える。一人消えては一人やってくる。いつの間にか、まるでずっとそこにいたかのような顔で。

ですからね、誰も気づかないのですよ。消えている者もいるということが、目立たなくなってしまっているんですね。

そういう仕掛けなんですよ。

 

性分――とか、適正とか、忍耐だとかなんでしょうかね。いえいえ、もっと別のところに元凶はあるような気がしますけどね。

どういう風に消えるかって?

いえいえ、そうじゃありません。前兆なんてものは微塵もない。

普通にせっせと汗水垂らして働いていて、突然プツっと切れるんでしょうね。

本当にいきなり、消えてしまう。

 

始まりは、丁度昨年の今頃――まだ寒くなり始めたばかりの、霜月のことだったかと思います。

それまでずっと中心となって頑張っていた女性がですね、ある日突然――消えた。

すわ神隠しか人攫いかと大騒ぎになりましてね、会社総出で大捜索ですよ。夜っぴて探しても見つからず、妖怪の仕業かと思い始めていたらですね、見つかったんですよ。

辞表が。

しかし会社は仔細を聞きもしなければ止めもしなかった。それがいけなかったんでしょうな。そこから何かがおかしくなり始めた。

一月ごとにですね、一人、また一人と、静かに消えて行くようになったのですね、そこから。

何か急用があって電話をしますでしょう。するとね、全く知らない誰かが平然と出る。

いつからいたのかも解らない。消えて行った者の代わりに、いつの間にかいるのですよ。これは怖いものですよ。相手は名前も顔も知らないのっぺらぼうみたいなものです。化かされてるような気にもなります。

店長同士、次は自分かと怖くもなってきますね、はい。

声が死んでおりますが大丈夫ですか? なんてね、元気な時にでも心配する電話がかかってきたりする。

私はね、ご覧の通り枯れた親爺でございますからね、大丈夫なんですがね、それでもやはりお互い不安なわけですよ。誰彼かまわず、消えて行っているわけですからね。

 

そして、三日前です。

また一人、消えたんですな。

やっぱり仔細はわからんのですよ。前兆も無い。

皺寄せはこちらにも来ます。ただでさえ皺の多い顔なのに、どんどんと皺寄せが来る。

えぇ。全く弱りますよ。

ただですね、私は思うのですがね、これは私のトコロだけの話ではないのじゃないか、と思うわけです。

表出しないだけで、こういう怪異は至る所で起きているんじゃないか。そんな風に思うのですよ。

 

そんな話聞いた事無い?

いえいえ、これは全てほんとうの事なのです。私がこの目で見て、体験してきたことなのです。

あなたが次かも知れないのですよ? いやいや、絶対なんてことはありません。それは十分にあり得ることなのです。

これからのことは誰にもわかりません。ただね、私は、厭な胸騒ぎを感じるのです。消えて行った者達の怨念がね、凝っているのを感じるんですな。

祟りなんてものはないでしょう。

でも、ないけれど、こういうものは祟りと呼べるんじゃないか、と思うのです。

というより――祟りのせいにしたいだけなのでしょうけれどね。はい。