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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

津々温羅温羅の桃太郎

温羅(うら)

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桃太郎伝説の元になっているのではとも言われるのが、岡山県吉備地方に伝わる温羅伝説。

温羅はどこからかこの吉備地方へ飛来したとされ、製鉄技術をもたらし、鬼ノ城という城を本拠として吉備地方を支配していった。鬼神であるとも言われている。

で、温羅の支配がきつかったのか、民は都へ「なんとかしてくだせぇ」と頼むことになる。

それに応えた崇神天皇は、孝霊天皇の子で四道将軍の1人の吉備津彦命(きびつひこのみこと)を派遣した。

吉備津彦命は温羅を追い詰めるのだが、温羅は雉(キジ)に化けて逃げようとしたので吉備津彦命は鷹へと姿を変えて追いかける。次に温羅は鯉へと姿を変えたので、吉備津彦命は鵜へと姿を変えて追いつめる。そして、なんとか温羅を討ち取ったのだという。

 

――確かに、桃太郎伝説の元になっている説があるだけのことはある内容。

この温羅は、百済の王子である説や、吉備冠者(きびのかじゃ)という異名があったりして、はっきりとしない。

どこか別の地からやってきた権力者を疎み、鬼としてしまった――と考えれば無理はないが、先に書いたように温羅は製鉄技術をもたらしてくれてもいる。

吉備津神社には、古くから伝わる占い、「鳴釜神事」というものがある。(これは妖怪の鳴釜とも関係していたりする)

この神事では、阿曽女(あそめ)と呼ばれる巫女が神事には欠かせないのだが、かつて吉備を支配していた温羅の妻が阿曽媛という名前。

これはどういうことかというと――退治され首を刎ねられた温羅だったが、埋めても犬に食わせてもうなり声を上げつづけ鳴りやまなかった。するとある日温羅が吉備津彦命の枕元に現れ、温羅の妻である阿曽媛に神饌を炊かしめれば、温羅自身が吉備津彦命の使いとなって吉凶を占おうぞ、と告げたのだとか。

それが鳴釜神事の始まりであり、阿曽女が加わっている理由である。

 

また、古くから鋳物師の村である阿曽郷出身の女性でもあった阿曽女。つまり、温羅は渡来してきて阿曽郷の女性と結ばれ、温羅のもたらした技術と鋳物の技術が合わさって釜などを作る製鉄技術が向上したのかも知れない。

しかしながら鬼とされてしまったのにも必ず理由があるのだろう。

それは記述通りに支配の仕方がえげつなかったのかも知れないし、単に淘汰されてしまったから故に自然と悪役にされてしまったとも考えられる。

渡来人であったが故に鬼とされた可能性もある。

 

――さて、この温羅話が桃太郎のモチーフとなった説は、確かに、と思えるものではある。

しかし、桃が出てこないのである。

そもそも桃太郎の話は、色々な逸話が混じったりこねくり回されたりしまくった挙句に出来上がっていることは間違いない。

桃が神聖視されるのは中国の影響や、日本神話での黄泉の国のイザナギの逸話を彷彿とさせるし、川上から流れてくる件なんかは隠れ里などの原型とも言うべきお椀の川流れをなぞっているように思える。

そのように、様々な逸話が混ざり合って津々浦々、全国で少しずつ形を変えて伝わっていたりするので、はっきりとこの温羅伝説が元であるとは断言できないのである。

 

昔話も、真剣に紐解こうとすると魑魅魍魎が溢れだして煙に巻かれることになるわけだ。怪異也。