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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

飛んで死に入る夏の人

『妖怪へぇこいたの手記』

夏が近づき、ヒャッホーな勢いで飛び込みたくなる気持ちは解らないでもない。

しかし場所だけはわきまえて欲しいものである。

――というわけで昨日の夜の事、少し帰りが遅くなって終電ギリギリの電車で帰っていると、珍しいことにほんの数駅先で人身事故。

リアルタイムで自分の乗っている電車の路線上で人身事故が起きたのは初だったので、少し嫌な気持ちでいると、なんと発車は一時間後の予定だというアナウンス。

人身事故は轢かれ方によって処理の時間が変わると聞いたことがあったので、はたして一時間という数字が何を意味するのか解らなかったけれど、なんとなぁく想像で「だいぶ散らかったんだなぁ」なんて考えていた。

もちろん見たことはないし、見たくもないし、ご存知妖怪ブログやっておいて怖い物グロイものがとても苦手なのでちょっと想像するだけでも包まる布団が欲しくなってしまう。

 

人身事故とか、ホームに突き落とされて、とか、そういう類のニュースを見聞きして、かつ必要以上に変な部分に怯える僕は、ホームで電車を待っている時に先頭に並ぶのが凄く嫌だ。

妖怪にも通り悪魔なんていうのもいるように、殺人なんて計画性があって起こる場合なんてほとんどなくて、大体は衝動的だとか自分でもよくわからないのに――みたいなケースの方が多いのだ。(と、百鬼夜行シリーズを読んで何度も書いてあった)

つまり、僕がホームの白線の内側にクソ真面目に並んでいる背後に控える魑魅魍魎ヒューマンズの皆様の内の誰かが、ほんと衝動的に、「あ、なんか今押したいかも♪」みたいなノリで僕をドンと電車が来るタイミングで押すことも十分に、十二分に、有り得ると思うわけだ。

それを覚悟で先頭に並ぶほど僕は豪胆ではない。

 

脱線したので――というか轢いたようなので話を戻すが、僕はざわつく他の乗客の中で逡巡した結果、歩くことにした。流石に一時間は待ってられない。

一応、無理な距離ではないかを確認して、Googleマップで調べると徒歩で僕の降りる筈だった駅まで一時間八分。僕が本気で歩けば多分もっと早く着けるはず。そう考えると、そんなに遠い距離じゃない。

恋人は「諦めてタクシーに乗りなさい」と言ってきたがそれを無視していざ出発。

 

歩く、歩く、歩く。

なんだか楽しくなってきて、歩くのが苦じゃなくなってきて、歩く、歩く、歩く。

途中――広大な墓地の横を歩いた。

ウォーキングハイになっていたので、墓地も全く怖くない。目を凝らす、なんか出ろ、出ろ、出ろ、出ろ。

もちろん、出ない。

歩く、歩く、歩く。

楽しい! 楽しい!

歩く、歩く、歩く。

歩く。疲れてきた。歩く。

遠い! いつ着くの! 

ふざけんな! まだなの!?

もうやめて! タクシー!タクシー止まってぇぇ!!

歩く、歩く、歩く。

足が逝く。助けて。今日飛んだバカ死んで詫びろ。あぁ、死んだのか。

最後の最後に物凄い数の人に迷惑を掛けて死んでいった気分はどうだ?

お前のちっぽけな人生は鉄の塊に粉々にされて今まさにどこの誰かも知らないおっさん達に拾われているんだざまぁみろ。

ただただ迷惑なだけだ。

誰も同情なんかしない。

誰もが嫌そうな顔をして「やめろよなぁ~」って言うぐらいが関の山だ。

どうだそんな人生の幕引きは。満足か。

じゃあ僕がお前の立場だったらどうしたか?

 

飛んだと思う

 

通り悪魔がそのように不気味で無意味な考えを僕の頭に沸かせ、そして。

足は棒、心は無になりマンションに着き、時計を見ると――一時間十分経っていた。Googleマップの予想との誤差二分。

Googleが世界征服をしようとしたらほんとにヤバイぞ。なんとなくそう思った。

そして、彼女の機嫌が物凄く悪かった。