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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

狸伝膏が意外と奥深い変態妖怪だったので用を足す

狸伝膏(ばけものこう)

トイレで妖怪が出るだけならまだいいが、今回紹介するのは大事なところを触ってくるとんでもない変態妖怪というのが、なんと、あるパターンを保って存在している。

まずは狸伝膏(ばけものこう)。そもそも読み方からして意味解らんのだが、この妖怪は女性がトイレに行って用を足している時に下から撫でてくる――というハイグレードアクロバティックHENTAIである。

それも撫でまわす時の手は毛むくじゃらなのだとか。もうサイテー。

さて、この狸伝膏は岡山県に伝わる妖怪。

土方(ひじかた)という士族がこの妖怪に狙われ、あまりにもウザイので引っ越したのだが、引っ越し先でも同じ怪異が起きてしまった。

そこである日、土方が刀を持って待ち構え、便器からニュっと手が出てきたところを切り落とした。

その切り落とした手をよく見ると、なんと歳を経た狸の手だったのだとか。

そしてある夜。

その手を切られた狸が、土方の主の夢枕に立って出てきた。

「ほんとサーセンした。凄い効果のある膏薬の作り方、こっそり教えますんで、手を返しちゃくれませんかね?」

仕方ねぇな、と主は手を返してやって、引き換えに秘伝の膏薬の作り方を教わった。

これは骨接ぎに大層効果を発揮する膏薬で、狸に教わったのだし「狸伝膏」と名を付けて売り出し、大いに売れた。お蔭でこの土方は大いに栄えたのだとか。

 

シタガラゴンボコ(したがらごんぼこ)

今度は岩手県のシタガラゴンボコ。これは岩手県の下川原付近に現れた妖怪で、これは「下川原のろくでなし」というほどの意味。

こいつはなんと、橋で小便をしている男性の局部を撫でる妖怪。

伝承も似ていて、豪気な男がその噂を聞きつけ実際に小便をしにいくと、本当に手が出てきて局部を撫でられる。

男は震えながらも(何震えか知らんけれど)その手を刀で切り、村へと持ち帰る。

すると夜中に老婆に化けたその妖怪が訪れ、「手を返してくれれば切り傷に効く膏薬の作り方を教える」と言う。

結果、男はその膏薬を売って繁盛した――という話。

 

黒手(くろて)

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『絵本小夜時雨』より

 更にまだ似た妖怪はいる。今度は黒手。

まぁ手が黒いのだろう。

コイツは石川県の妖怪で――とある村の男の妻が、夜中に便所へ行くと突然用を足している時に尻を撫でられるという事件が起きた。

その様子を聞いた夫が便所に入り待ち構えると、同じように手が出て来たのでこれをバサっと切り落とした。

そして数日後、三人の坊主に化けた妖怪が手を奪還しに来るのだが、この黒手の話だけは「膏薬の作り方と引き換えに」というくだりがない。

手を奪い返され、さらに手を切った刀も奪われてしまっておしまい、である。

 

 

で。

駆け足で似た妖怪を紹介したが、これには元ネタだろうと思われる話がある。

それは、河童の妙薬。

大筋はここで紹介した三妖怪と似ていて、正体が変わっているだけである。

深読みしてみると――まず河童は手が抜けやすいという特徴を持っている。これは多くの古書にも記述のある、「相撲が得意」と同じぐらい有名な特徴なのだが、この特徴はそのまま「手を切る」という部分に当てはまる気がする。

遭遇場所が便所なのは、河童の生息地である川の水属性繋がりな気がする。

局部やおしりを狙うのも、尻小玉を狙う河童を彷彿とさせる。

ではなぜ膏薬をくれるのか?

この部分に関しては、更に深読みが必要になってくる気がするが、やはり河童を大工や職人が起源とした上で考えるとちょっと解りやすくなる。

使役されていた職人達が、己がキズなどを治す為に使っていた薬の作り方を、一般の人々への恩返しとして教えてくれた――とか。

えぐい深読みをすれば、職人達の技術を奪い取って財を成した話――と読めなくもない。

 

因みに河童起源を辿った際の「職人」というのは、多分に差別的ニュアンスも含まれているので、現代の感覚での職人とはちょっと違うことに注意。この辺に関してはめちゃくちゃややこしいのだが、とにかく今の感覚でとらえちゃだめとだけ思っていてほしい。

 

つまり。

最近も書いた気がするが、この妖怪達もまた一つの大まかな構成内で、登場人物や舞台を変えただけの、河童の妙薬を元にした妖怪だということがわかるのである。

妖怪と昔話と伝承。

それらの面白さと闇は、物凄く深いのだ。