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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

付喪神パンツがメタファー

『妖怪へぇこいたの手記』

物は長く使う方だと思います。

特にオシャレに疎いので衣類は特に長く使います。

中には、長く使い過ぎて流石にヤヴァイだろと思うようなものまであります。

特に大事に使ってる、着てる――というわけじゃないんですが、とあるTシャツなんか高校生の時に一目惚れして買って、常に勝負Tシャツとして着続けましたが三十路目前の今でもどういうわけか現役で相変わらず勝負Tシャツしてくれてます。

勝負時なんてよく考えたら無いンですけど。

 

そりゃ上着とかズボンとか――待った。仕切り直し。流石にこれじゃあダサイ気がするので、ナウでヤングな言い回しでえせオサレさんを演出します。

 

そりゃアウター、あとパンツ(語尾の下がらぬ方)はたまぁに買い足しますが、インナー類は、特にゥインナー保護のインナーらへんは、やけに数はあるものの全てもらいものだったりして滅多に買わんのです。

 

――さて話は少し変わりますが、昨晩僕は久々の超弩級の下痢に苦しんでました。

「世界よ滅んでしまえ」

と腹痛の時は思うものですが、そんな終末を望む心持でスと視線をパンツ(トランクス)に移したら、かすれた字がゴムの部分に見えました。

 

S・兄

 

Sは僕の名前のイニシャル。兄は長男だから?

あぁ、これは母ちゃんが兄弟で間違えないようにマジックで書いた字だ。

そう気付いた途端、僕の頬を大粒の涙が――伝えば良かったのでしょうが状況が状況だけに涙よりもシモの方を早く出し切ってしまいたかったので母ちゃんの思い出はすぐに世界を呪う想いと共にトイレの渦に巻き込まれて流れていきました。

 

いやちょっと待てよ。母ちゃんの面影をパンツに見るのはいいけれど、つまりこれは俺が小学生ぐらいの頃から履いてるパンツってことじゃあないのか?

 

うぇばっちぃ。

 

と一瞬思いはしたのですが、どういうわけか未だにそんなにヨレておらずにシャンとしている。一体何億回洗濯されてきたのかわかりませんが、僕は無意識に、たまに、そいつを履いていた筈なのです。

 

「お前……まさか喋れたりするんじゃないのか?」

「……」

「おい。黙ってるけど、喋れるんだろ? いいぞ、俺は妖怪が好きだ。付喪神も大歓迎だ」

「……」

「そうか……。まだ年数が足りないんだな。わかったよ」

「……」

 

間違いなく、ヤツは「……」と僕に返しました。

もう完全に付喪神なのです。だから、十年以上経った今でも、現役でさりげなく僕の下着ローテーションのスタメンに入っていやがったのです。

 

けれども、次に恋人が出来た際は絶対に履くまい、と心に決めました。

「S・兄」なんてコトに及んで脱いだ際に発見された日にゃあ、お婿に行けません。

 

もう収拾がつかなくなってきたので少し前に話題だった村上春樹風に終わります。

 

――僕の記憶が確かならば、1985年の1月16日から2014年の10月15日までの間に、僕は358回腹を壊し、54回の屈辱的脱糞を行い、6921回世界を呪ったことになる。

 その時期、僕はそんな風に全てを数値に置き換えることによって他人に僕は粗相をしていないと伝えられるかもしれないと、そよ風に抗い春の桜の花びらを咥えて踊り狂う北国のシロクマのように真剣に考えていた。

しかし当然のことながら、僕が世界を呪った回数や上った階段の数や紹介してきた妖怪の数に対して誰ひとりとして興味など持ちはしない。

そして僕は光ある道を見失い、指を噛み切り散血で写経をし、世界の終わりにハードボイルドな次元を気取ってひしゃげた煙草を唇の端に咥え、ねじを巻く鳥に馬鹿野郎と言わせたくて毎日話掛け、腹を鍛えようとヨーグルトを毎日食べては腹を下し、結局全てを放擲して妖怪になった。

僕のパンツが付喪神になった。その言葉を聞いた妖怪達は一斉に――それはメタファーだね、と言った。

僕は最後に、できれば日本語でお願いします、と流暢なフランス語で返した。意味は無い。