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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

それは狸囃子のごとく

『妖怪へぇこいたの手記』

浴衣姿の人々を朝から多く見かけました。

調布界隈では、夏の締めくくりともいうべき調布の花火大会が行われ、皆それを見に行くようでした。

 

夜になり、お店に僕一人になると、遠くから花火の音が聞こえてきました。

威勢の良い、小気味良い音。

 

たまたま店にいたお客さんが、「すぐそこの窓からもよく見えるわよー、綺麗ねー」と教えてくれたので、そのお客さんが帰ってから僕も窓辺に寄ってみました。

でも音は良く聞こえるのに、どこにも花火の閃光を見つけることが出来ず、なんだか淋しい気持ちに。

 

ほんの一輪でもいいから、燃える花を見ることができれば、僕だってこのように終わっていく夏を愛おしく思えたかも知れません。

でも、今年はカケラすらも花火を見ることが出来ませんでした。

 

帰る支度をしていると、店前を花火大会帰りのカップル達が通り過ぎて行きました。

「短かったねー」なんて言いながら。

 

また、駐輪場まで向かう道すがら、駅の構内から聞こえる駅員さんの怒鳴り声が聞こえました。「押さないでください」だとか、「ただいま大変混雑しております」だとか。

 

まるでそれらは別世界の、それこそ狸囃子のごとく、どこかから風に乗って「聞こえるような気がする」類の虚ろな雑音にも感じられました。

 

 

――夜なのにまだがんばってるセミの声。慣れない下駄で指の間が痛くなっちゃって道端で立ち止まってる女の子。うちわをバタバタさせながらスイカを売ってるおっちゃん。見えない花火に焦がれる心。

 

最後に想ったのは、淋しさじゃなく、あぁ日本って本当にいいなぁ、ということでした。

音だけの花火もまたいとをかし。