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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

妖怪くそばばあ

『妖怪へぇこいたの手記』

婆さんの日常会話に超弩級の悪口をさりげなく入れ込む技は匠の域であります。

 

今日来たお客様に、素敵なおばあ様がおりました。

僕が作業を中断して接客したのですが、物腰は柔らかでそこそこ品のあるおばあ。

お客様の望むようなものにより近い提案をし、お値段を伝えたところ、

「高いわねぇ。私が通ってたお店はこれの半分以下だったわよ」

とおっしゃりました。

しかしその素敵なババ様は快くお財布を取り出しお金も払って下さり、ならそんなこと言うんじゃねぇよクソがと思わなくもなかったのですが有り難くレジにて清算し、お釣りを返しました。

そこからふいにお客ばぁの思い出話が始まりまして、この辺りは昔はのどかだった――だの、同種のお店もいくつかあった――だのと教えて下さいました。

そしてさりげなく

「おたくのお店が出来てから私の馴染みの店は潰れたのよぅ」

とも教えて下さいました。

30年以上続いた小さな個人経営のお店だったようで、ばばあ様もとても好きなお店だったそうです。

「でもおたくのお店が出来て無くなっちゃったんだけどね」

なんて笑顔でババアは言いやがりまして、僕も返答に大変困りました。二度目です。

そこからはもう僕もイライラしてあまり記憶していないのですが、少なくとも五回以上は、「お前の会社のせいで私の馴染みの店が消えた」という風な呪いの言葉を吐いて下さいました。

まるでその言葉を言う為に来たのではないかと思う程に、事あるごとにソレを言うクソババアはなかなかに興味深いお客様でした。それに、特に悪意がある風ではない感じでソレを言うので尚更興味深かったのです。

 

――そして帰り際、なんだか不思議と高揚していた僕は入口のドアを開けてお見送りしたのですが、その最後にまで「おたくのお店が出来てからね――」と言い始めまして、ついに僕も我慢の限界。

堪えて堪えてほんの少し、ブフっと笑い声が出ちゃいました。

 

怒りを感じていいのか、謝るべきなのか、良識も常識も解さぬ僕は、ただその執拗な言葉の繰り返しに笑ってしまったのです。

クソババア様は大層不服そうな顔をしてらっしゃいましたので、僕は緊急回避的に真顔を構築し、「それはもう本当に申し訳ございませんでした」となんかわかりませんがとりあえず頭を下げて事なきを得ました。

 

毒蝮三太夫全盛期のように、「さっきからごちゃごちゃうるせぇなクソババア! とっとと墓入って来世で出直して来い!」とか言えたら痛快なんでしょうが、根性無しの僕はただただ全力作り笑顔でクソババア様を見送ることしかできませんでした。

そしてよくわからんジャンルの生物ということで、ここにて「妖怪」を冠し自己満足自己解決自己完結させていただく次第でございます。