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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

さかさま幽霊の怨み

さかさま幽霊

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 「端井弥三郎幽霊を船渡しせし事」より

 

さかさま幽霊は、江戸時代の書『諸国百物語』に記述のある妖怪である。

何の捻りも無く絵では幽霊がさかさまになっているが、これには深いワケがある。

 

――織田信長の家来で、端井弥三郎(はしいやさぶろう)という男がいた。

この男、男色を好み、毎晩長い距離を歩きある男の元へと通っていた。

或る晩のこと。その日も夜に仕事を終え、早速愛する男の元へと歩き出した弥三郎だったが、激しい雨が降り出し、不気味な闇夜となった。

いつも渡る川まで来て、船頭を探したものの、どうやらどこかで居眠りをしているらしく見当たらない。

どうしたものか、と弥三郎が考えていると、川上から火のようなものが流れてくるのが見えた。

怪しいな――と思いながら見ていると、なんとそれは舟で、しかも女の幽霊が火を吹きながらさかさまになっているではないか。

弥三郎は驚き刀を抜き、「誰だ!」と聞いた。

するとさかさまの女は、

「私はここからもう少し行った先の庄屋の女房でした。しかし夫が妾を持ち、その妾としめしあわせて私を絞め殺したのです。そればかりか、私の怨みが抜け出し怪を成さぬようにと、あろうことかさかさまにされて土に埋められたのです。仇を取ろうにもこの体たらく。あなたはどうやら相当な武士と見えます。どうか私を川の向こうまで渡してくれないでしょうか?」

と弥三郎にお願いした。

なるほど本当に相当な武士であった弥三郎は「よしわかった」とさかさま女の願いを聞き入れ、自ら船の梶をとり女を庄屋の家まで送り届けてやった。

庄屋の家の辺りに着くと、さかさま女はさかさまのまま飛ぶように跳ねて庄屋の家へと突撃していった。

しばらくすると庄屋の家の中から女の悲鳴が聞こえ、すぐにさかさま女が庄屋の妾と思われる女の首を持って出てきた。

「この度は本当にありがとうございました。お蔭さまでこのように楽に首をもぐことができました」

さかさま女はそう言うと、跡形も無く消え失せてしまった。

翌日。

弥三郎は「昨日、ここら辺で何か変わったことは無かったか?」と人に尋ねてみた。

すると、「えぇ、昨晩庄屋さんの女が誰かに首を引っこ抜かれたみたいです」と言われた。

肝を冷やした弥三郎は、念の為城に帰って報告した。

その甲斐あってか、庄屋の悪事はばれ、さらに土の中からさかさまに埋められた女の死体も発見され、その庄屋は成敗されたそうな。

 

 

――というお話。

さかさまの幽霊が喋り、火を吐き、飛び跳ね、首を引っこ抜く……。

考えるだけで恐ろしい。

絵を見ただけでは笑っちゃいそうになったが、アレが襲ってくるとなるとちょっと笑えない。

江戸時代には幽霊も随分とアクロバティックでアグレッシブだったようだ。羨ましいやらウルトラCやら。