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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

マヨイガ(まよいが)

マヨイガ(まよいが)

 

妖怪フリークでなくとも名前は聞いたことのある方は多いのではないかと思われるのがこの「マヨイガ」。迷い家、と当て字で書く場合もある。

性質は隠れ里と同じような桃源郷系怪異であるが、マヨイガはかの柳田國男の「遠野物語」に出てくる、遠野における山中に在るという不思議な家の怪異のこと。

尚、遠野物語には2パターンの「マヨイガ」の話が書いてある。

 

一つは、小国の三浦某という村一番の金持ちの、23代前の主人時代に起きた話。

その遡る事23代前の主人の妻が、フキを捕りに川沿いを登って行った所、随分深くまで来てしまった。辺りを見回すと、そこには見たこともないような立派な黒い門の家があった。

訝しみながらも門をくぐってみると、人気はあるのに誰もいない。鶏も飼われているし、裏庭には牛も飼われていて、馬までいる。

しかしやっぱり人がいない。

玄関から上り込んでみると、美しい朱と黒の食器が台所に並べてあり、奥の座敷では火鉢があってその上では鉄瓶が蒸気を上げて煮えたぎっている。

妻は急に「山男の家にでも来ちゃったんじゃないか」と不安になり、慌てて引き返して帰った。

帰ってから村の者にその話をしても誰も信じてはくれなかった。

数日経ったある日、妻が川で洗濯していると、川上から朱色の見事なお椀が流れてきた。

あまりに美しいので拾い上げ、食器に用いたら汚いからと、穀物を計る為の器として使うことにした。すると、そのお椀を計りにして計った穀物はなぜか尽きる気配がない。家の者も怪しんで妻に尋ねたところ、川で拾った事を告白したのだという。

その後、その家には幸運が続き、ついに現在の村一番の金持ち「三浦家」へとなったそうだ。

柳田國男は、その項の最後に「マヨイガに行き当たった者は必ずその家の何でもいいから持って帰るべきなのだ。マヨイガはその人に与えんが為に現れているのだから。しかしこのケースでは女が無欲過ぎたので、マヨイガの方から椀を流してよこしたと考えられるだろう」

と書いて結んでいる。

 

二つ目の話は、ほぼ今の話と同じなのだが、「それはマヨイガだよ!」ということでマヨイガに行き合ったとされる男を筆頭にマヨイガ探しをするが結局見つからず、幸運も訪れませんでしたとさ、ちゃんちゃん。な話になっている。

 

 

――実に様々な事を読み取れる怪異である。

最初のエピソードでは無欲さが幸運を招き寄せるという教訓を。次のエピソードでは強欲が何も得られないのだ、という教訓を含んでいるように思える。

 

ただし、それはお金持ちになることが良い事、という前提の元で、である。

村という単位が主だった時代において、突出した金持ちは悲劇の元にしかならない。

マヨイガに遭遇し金持ちになったとしても、そこには必ず妬みが生まれ、本当に幸福に過ごせるのかは解らない気がする。

現代で言えば町内ぐらいの規模だろうか? その範囲内に突然宝くじか何かで大金持ちになった家が出たとしたら――あら羨ましい、だけの話で終わるかどうか。

そのようにお金を得ることがバランスを崩す悪いモノだと考えると、マヨイガの話も違って見えてくる。

 

もし山中でマヨイガにたどり着いたのなら、あなたはどうするか?

僕は――ただ幸運が訪れるだけとは限らないとは言っても、欲深い僕はきっと何かを取ってくるだろう。なるべく誰にも気づかれぬよう、小さく、それでいて高価そうな物を頂戴する。

だってお金持ちになりてぇもん!