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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

イスを買ったら部屋に入らなかったので『月百姿』より「月夜釜」

『月百姿』

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 『月百姿』より「月夜釜 小鮒の源吾 鳴矢伴蔵」

 

 ちょっと前の話になるが、今までホームセンターの凄く安い座椅子に座ってパソコンをいじるのが常であったのだが、ある日ふと厭になった。

というのも座椅子がペシャンコになっていたのもあるし、何より尻がすぐ痛くなるのである。

腰ではなく、尻だ。

実は僕、映画が大好きで、ちゃっかし映画の専門学校に通っていた頃もあるほどなのだが、映画館が苦手である。

なぜか? それは、尻が痛くなるからである。

つい最近は『風立ちぬ』を見に行ったが、その時もやっぱり尻が痛くて痛くてもう映画どころではなかった。

妖怪尻痛い。(一応、妖怪図鑑の面目の為に呟いてみた)

 

理由はシンプルで、ケツに肉が無さすぎる。

「そんなこと人前で言ったら世界中の女性に殺されるよ!」

と前に誰かに言われた。

ネズミーランドも苦手だし、ケツの肉に憧れているだなんて、もう僕は絶望的かも知れない。(僕の勝手な統計上、ネズミーランドが嫌いな女性は極わずかである)

 

――とにかく、そんなこんなで僕は立派な椅子を買ってみる気になったのだ。

超色々調べて、2ちゃんのデスクチェアスレまで覗いて(凄まじいイスの世界がそこにはあった)、国産の、評判の良い椅子を厳選し、買った。

まさかの到着まで2週間待ちにも耐え、いざ来たその素晴らしいイス。

が、僕の素敵なボロアパートの玄関をくぐれなかった。

「あ~、なんとかするんで置いといてください」

と言った僕に、笑顔で「そっすか、すいませぇん」と言った汗だくの佐川急便のお兄ちゃんの「あ~めんどくせぇの終わったぜ」な顔はきっとずっと忘れない。

 

 

――というわけで、今宵紹介する月岡芳年の『月百姿』の絵は、「月夜釜」。

「月夜に釜を抜かれる」という諺が元になっている絵で、描かれているのは石川五右衛門の弟子二人、という設定。

その二人が月夜に釜を盗みに来たのだが、デカすぎて盗めず困っているところ……らしい。

盗賊のポーズが芳年らしい面白みのある恰好でとても良い。

「てめぇぶっ殺す!」

とかセリフ付けたらジョジョみたいじゃないか。

 

ちゃんと書きたくて調べたのだが、確かに「小鮒の源吾」という人物は浄瑠璃の演目などで五右衛門の弟子(仲間?)として出てくるのは確認できたのだが、「鳴矢伴蔵」はちょっと解らなかった。

もしかしたら何かの演目のワンシーンなのかも知れないが、ここでは元になった諺について触れておく。

月夜に釜を抜かれる、というのは、「月の出ている明るい夜だからと油断していると、とても大事な釜を盗まれちゃったりするんだぜ」という油断大敵な意味の諺である。

しかし、なんだかイマイチ諺として曖昧な感じがあることから、様々な人が様々な説を唱えており、「この諺はオカマを掘られる(抜かれる)という意味じゃないか?」という説もまことしやかに存在していたりする。

 

結構、芳年のこの『月百姿』の元ネタ探しは無学な僕には難しく、妖怪の由来探しの時に味わった暗中模索の五里霧中感を度々感じたりする。

芳年やはり侮れんな。

 

――で、冒頭の僕の買ったイスであるが、超強引に、ダンボールがボッコボコに変形するほどに玄関に押し込んだ結果、玄関脇に立てかけてあった傘が2本折れはしたが、なんとか中に入れることが出来た。

座椅子から高さのあるイスに変えたことの感動、座り心地の良さ、どこを取っても悔いのない買い物になる筈だった。

しかし――ちょい高級イスでもケツは痛くなった。

そういえば、「腰の痛みが全くなくなった」みたいな評判は見たが、「ケツの痛みがなくなった」なんてものはなかった。

なんなの? みんなケツ痛くならないの?

 

「妖怪へぇこいた」などと名乗ってはいるが、その妖怪が放つ屁は、繊細で薄っぺらい尻から放たれることはどうか覚えておいて頂きたい。