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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

日本一有名な大蛇、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)

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月岡芳年『日本略史 素戔嗚尊』
 
日本神話に登場するヤマタノオロチの名は、その物語は知らなくとも名前だけは聞いたことがあるかと思う。
妖怪かと言われれば少し違うような気もするのだが、しばし妖怪として扱われることもあるようなので紹介することにした。
 
尚、ヤマタノオロチの登場するスサノオの神話は、『古事記』のバージョンと『日本書紀』のバージョンがあり、表記も『古事記』では「八俣遠呂智」、『日本書紀』では「八岐大蛇」となっている。
加えてスサノオも、『古事記』では「須佐之男命」。『日本書紀』では「素戔嗚尊」になっている。
 
資料として古いのは『古事記』なのだが、信憑性の裏付けの怪しさや一般的であるかどうかを考えた末、ここでは『日本書紀』のバージョンで紹介したいと思う。まぁ、大体同じなんだけどネ。
 
 
では、まずは主役たる素戔嗚尊さんの生い立ちから。長くなる予感がしてるので「そんなのイラネ」という方は八岐大蛇というワードが出るまでは飛ばすと良いかと。
 
ーーある時、高天原(たかまがはら)にてこの世界に天地開闢(てんちかいびゃく)という神々の誕生が起こる。それが世界の始まりの瞬間であり、宇宙で例えればビッグバンだろう。
そして沢山の神々が誕生し、その最後にイザナギ(男)とイザナミ(女)という神が産まれた。
そしてこの日本の島々は、イザナギとイザナミによって作り出され、それは「国産み」と呼ばれる。
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天瓊を以て滄海を探るの図
 
そしてその後、イザナミとイザナギは神々を産み出す「神産み」を行う。
その際イザナミは、火の神カグツチを産むのだが、火の神なので熱くて熱くて陰部に大火傷を負い、死んでしまう。
嘆き悲しむイザナギはカグツチを殺し、イザナミを手厚く埋葬した。
しかしイザナギのイザナミに逢いたい想いは消えず、なんと黄泉の国にまで逢いに行ってしまう。
そこでイザナギは変わり果てた恐ろしい姿のイザナミを見て逃げ出してしまう。
 
……なんとも格好悪いイザナギ。
男の情けなさはもうこの時から始まっていたのか。
 
黄泉の国と地上との境目まで逃げたイザナギは、境目に大岩を置いて塞いでしまう。その際に追いかけてきたイザナミは、
「なんて酷い男! この恨みは忘れない!

そっちの国の人間を毎日千人ずつ殺してやる!」

と言う。

それに対しイザナギは、

「ならば俺は毎日千五百の産屋を建てる!」

と返した。

記念すべき日本国初の夫婦喧嘩である。

 

ーー黄泉の国から戻ったイザナギは、穢れを落とさないとヤバイ! ということで禊(みそぎ)を行い穢れを落とす。

その禊の最中に生まれたのが、天照(あまてらす)、月読(つくよみ)、素戔嗚尊(すさのお)の三神である。

ようやく素戔嗚尊が産まれた。

 

ーー天照は太陽の、月読は月の、そして素戔嗚尊は海原の神という役割をイザナギより与えられるのだが、なんと素戔嗚尊だけは「ヤダ。俺は黄泉の国のイザナミ母ちゃんのとこへ行きたい」と断った。

これに怒ったイザナギは素戔嗚尊を追放。

素戔嗚尊は黄泉の国へと旅立つ前に姉の天照に挨拶しようと高天原へと行く。

しかしここで悲しき誤解。天照はてっきり素戔嗚尊が攻め込んで来たものと勘違いし、武装して素戔嗚尊を撃退しようとする。

「待ってよねぇちゃん誤解だってば!」

と、素戔嗚尊は誤解を解くために誓約を交わす。

こうして誤解を解き、高天原へと入ることが出来た素戔嗚尊だが、滞在中に沢山の粗暴な行いをしてしまう。

「あーもーほんと素戔嗚尊ウザいわー」

と呆れた天照は、天の岩戸に閉じ籠ったきり出てこなくなり、素戔嗚尊は当然高天原を追放されることに。

 

ーーそして! いよいよ素戔嗚尊が出雲に降り立つ。……長かった!

 

出雲の簸の川を上っていた素戔嗚尊。するとそこで美しい少女を囲み、しくしくと泣く老夫婦と出会った。

泣いている理由を聞くと、

「私達には八人の娘がいた。しかし毎年一人ずつ八岐大蛇に生贄として食べられてしまい、とうとう今年は最後の娘、奇稲田姫(くしいなだひめ)だけになってしまった。どうか助けてはくれないだろうか?」

とのこと。

素戔嗚尊は、

「うんいいよ。ただし、もし俺が八岐大蛇を退治できたら奇稲田姫と結婚させてくれ」

と条件を突きつけて快諾した。

老夫婦も、娘が助かるのならなんでもありがてぇ、とすぐに素戔嗚尊の条件を呑み、八岐大蛇討伐をお願いした。

 

素戔嗚尊は早速老夫婦に酒を造らせた。

そしてその酒を八つに分けて門の奥に配置し、八岐大蛇が現れるのを待った。

ようやく登場の八岐大蛇。

頭は八つ、尻尾も八つ、背中には松などの木が生い茂り、目は鬼のように赤い。

人間を恐れさせていた八岐大蛇だったが、素戔嗚尊の仕掛けた酒に素直に首を八つに分けて飛びついた。

そしてしこたま酒を飲み、酔っぱらった八岐大蛇を、素戔嗚尊は十握剣(とつかのつるぎ)で切り刻み、退治した。

Q・……え? これだけ? 

A・えぇ。これだけ。

 

――その後、晴れて解放された奇稲田姫と素戔嗚尊は結ばれ、出雲の淸地(すが)の地に宮を建てた。

 

 

 

――肝心の八岐大蛇戦は一瞬で書き終えてしまったが、おおまかな流れはこんなところ。

因みに、八岐大蛇を切り刻んだ際、尻尾から剣が出てきたという伝説もあり、それが「草薙剣」だそうだ。

かなりぶっ飛んだ、神々しい流れ満載の日本神話。八岐大蛇紹介の筈が、ちょっとした日本神話勉強になってしまった。

しかし素戔嗚尊と八岐大蛇を書く上ではどうしても「その前」を書く必要があったような気がしたので許して欲しい。

 

因みにヤマタノオロチは、八の頭の大蛇であり、蛇は何かにつけて水と関わりのある生物。

このヤマタノオロチ退治の神話は、荒れ狂う河川を鎮める灌漑工事を現しているとも云う。

なるほどそう考えると色々と合点がいくのである。

例えば治水工事に人柱を立てていた事も、クシナダが大蛇の生贄に選ばれてしまったこととリンクするし、酒を使って退治したのも酒を神聖な物として捉えれば儀式や信仰めいた力で河川をコントロールしようとした太古の様式が浮かび上がる。

ではスサノオは何役なのか? ちょっと考えてみてほしい。

 

では最後に、、奇稲田姫と結ばれた素戔嗚尊が詠んだとされる、日本最初の和歌を詠みながら退散する。

 

八雲たつ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を

 

 (訳・雲湧きいづる出雲にて、妻と隠れ住むための宮殿を作ったぜ。出雲の雲も宮殿の八重垣を作ってくれてるみたいだぜ清々しい~!)

※全国に存在する須賀神社でも知られる、素戔嗚尊が宮を築いた須賀の地は、素戔嗚尊が「すがすがしい」と言ったことが由来。