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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

煤落(すすおとし)

『うぃき的現代妖怪絵巻』

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束酢子太郎氏提供「煤落」

 

煤落は、風も無い部屋などに現れ、天井からぶら下がり飲み物などに埃やゴミを入れていくと言われる妖怪。

しかし元は随分と違う妖怪だったらしい。伝承によると――

 

江戸時代、大名行列等を盛り上げる為だけの特殊な職業を生業とする男がいた。

男の職業は「落梅師(らくばいし)」というもので、文字の通り梅などの花びらを撒き、様々なシーンを煌びやかに演出する地味ながらも華やかな職業であった。

仕事の件数は少ないものの、各地の大名から依頼があり、男の仕事はなかなか繁盛していた。

ある日男はとある大名に、「祝ってやりたいおなごがいる。できればこっそりと、夜に花を撒き、驚かせてやりたい」と依頼された。

夜の花吹雪も珍しい仕事ではなかった為、男は快諾し、その城主の指定した女性の住む屋敷へと向かった。

しかしそれらは全て罠だった。男が次に仕事をする筈だった大名を嫌っていた依頼主が、有名になっていた落梅師の男を殺そうと企てたのだった。

男はまんまと罠に嵌り、祝う筈だった部屋の天井裏で刺し殺された。

僅かに開いた天井の隙間から、男の持っていた花びらと、男の血とがはらはらぽたぽたと落ちる様は何とも美しかったそうだ。

 

その後、奇妙な噂が立った。

その落梅師の男を殺害する計画に加わった者達の家で、夜な夜な天井裏に何かいる気配がすると言うのだ。中には顔に花びらや砂を落とされた者もいたらしい。

また、男が殺されてから数か月後、計画を企てた大名が何者かに毒を盛られて死んだ。人々はこれを落梅師の男の祟りと信じ、「梅落神(ばいらくしん)」として祠を建てて祀り、辺りには梅の木を沢山植えたと云う。

 

――そんな落梅師の伝承が、様々な言い伝えや逸話と混ざり、いつからか「梅落神」の「梅落(ばいらく)」が、すすを落とすという意味の「煤落(ばいらく)」に変わり、現代では埃やゴミを撒くだけの妖怪へとなってしまった。

しかし現代の煤落も、落梅師の男の性質を受け継いでいるのか、頭のカタチが花びらに見えないこともない。

また、埃を飲み物に入れられたら腹が立つが、飲んでみると不思議と少し幸せな気分になるとか。

 

もしあなたがテレビを見ている間に飲み物にゴミが入ってしまっていたら、それは煤落のせいかも知れません。

そんな時は嫌な顔せず、かつて梅の花を撒く仕事をしていた男の事を少しだけ考えてみてあげてください。