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妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

白蔵主(はくぞうす)

『絵本百物語』

白蔵主

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『絵本百物語』より「白蔵主」

 

白蔵主はキツネが化けた妖怪。

白蔵主は元は寺の僧の名で、その僧の甥の猟師が、キツネを捕えて皮を売って生活していた。しかしそのせいで夢山に住む白ギツネから男は恨みを買ってしまっていた。

そこで白ギツネは白蔵主に化けて男を訪ね、殺しはいけないよぉ~、と説いた後さらにお金を渡して罠を全て持ち帰った。

しかし男は金を使い果たし、再び金を乞いに伯父の寺を訪ねようとしたので、白ギツネは先回りして本物の白蔵主を食い殺し、自らが白蔵主に成りすました。さらに白蔵主(白ギツネ)は男を追い返しただけでなく、五十年もそのまま僧として勤めた。

しかし。あるときに街で鹿狩りが行われていたのでそれを見物に行った白蔵主は、キツネの正体を見抜いた犬に噛み殺されてしまった。

 

……なんだか白蔵主さん(キツネの方)めっちゃ可哀相。

 

画中解説文

白蔵主の事は、狂言にも作りよく人の知るところなれば、こゝに略しつ。

 

うぃき訳

白蔵主の事は狂言にもあるし、みんな知ってると思うから略すよ。(←しらん)

 

『絵本百物語』の白蔵主の本文は、最初の妖怪であるからかも知れないがすこし説教染みた高説から始まっている。↓

 

本文訳

「奇怪」というものは、自身の心の持ちようで招き寄せてしまったりまた払い去ったりするものである。なので、何かがいる、と思った時には必ず現れ、同じように絶対にいない、と思う時は現れないものである。

怯えてさえいれば傘の骨も怪異となってまるで笑っているかのように見えたりする。

同じように、松の木に掛けてある草鞋も首を伸ばして道行く人々の笠の中を覗いたりもするのである。故に、高慢でも強情でもなく、妖しい物を疑う心も無い者のことは、鬼神であっておその心中を推しはかることはできないのである。

そのような奇怪な物の中でも、特に獣怪、つまりは獣が年を取ったのが人の目を忍んで暮らし、悪事をなすことがある。

狐狸が人に憑いたり、猫やねずみが死人に妨げをするなどのことはみな獣怪が人の身体と言う器を借りて乗り移ったものである。

そのような怪は、人の心の隙を狙うものである。逆に言えば、油断の無い者に獣怪の危害は及ばない。

狐は人を化かすものであると言えば、稲荷山でわざわざ暮らす者もいないだろう。

生態系の頂点に君臨するわれらヒトが畜類に惑わされるなどということはその人が愚かで心に誠がないために起こるのである。

世間で狐に憑りつかれたり化かされたりする人というのは、その多くが愚か者か、女子供ばかりである。

人の守るべき五つの道徳、仁・義・礼・智・信を知る人にはそのようなものは寄らない。

昔、甲斐の国は夢山の麓に、弥作という猟師が住んでいた。

いつも鼠を熊の脂で煮てはそれを罠に仕掛けて狐を捕り、その皮を剥いで売って生計をたてていた。

夢山には年を取った狐が住んでいた。その狐は沢山の子供を産んだが、たいていは弥作に捕られ殺され、今では一匹しか子供は残っていなかった。親狐はそれを恨んでいた。

弥作の伯父が宝塔寺という寺の坊主になっていて、名を白蔵主といったことを狐は知っており、ある時伯父の白蔵主に化けて弥作の元へ行き、

「殺生の罪は来世の妨げとなるから、狐を捕るのはもうやめなさい」

と忠告して、銭一貫文を与えて狐捕りの罠を持ち帰った。

しかし弥作はそれでは生活が立ち行かない。もう一度白蔵主に会いに行き、あわよくば再び銭を貰おうなどと目論み、宝塔寺へと行こうとしたので、狐はこれを察知し、先回りして白蔵主を欺きおびき出して食い殺し、自ら寺の住職に化けて過ごすうち、五十年の歳月が経った。

同じく甲斐の国倍見の牧場で鹿狩りがあった時、白蔵主に化けた狐が人に混じって見物していると、佐原籐九郎という郷士の家の鬼武、鬼次、という二匹の犬に食い殺されて、ついに正体が露見した。殺された白い老狐の尾には、白銀の針のような毛が生えていた。

人々は狐の祟りがあることを恐れ、里の山影に死骸を埋めて塚を作り、ほこらを建てて祀ったが、そこは今は狐の社と言われている。

能狂言の「こんかい(変換で出ず)」はこの話に基づいて作られたものだが、人が悪事と知りながら悪の道に入るのは畜生の心と同様の振る舞いである、との教訓を込めた話である。

これより、狐が坊主に化けることを白蔵主と言い習わし、また坊主が狐に似た行いをすると白蔵主と言い触らしたのである。

この話を大和の国あしな寺の事としたのはこじつけであろう。